マンガ『二月の勝者』3巻(18話ー27話)あらすじネタバレ&現役塾講師が語る塾あるある!

中学受験

手に入れたいのは「学歴」だけですか?

読者へも思考力を問うようなキャッチコピーの『二月の勝者』3巻。
中学受験をする家庭が手に入れたいと考えているのは学歴だけでは、もちろんないですよね。


高瀬 志帆さん作の二月の勝者は『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて、2018年1号から連載中。
2021年4月時点で累計発行部数は130万部を突破。
柳楽優弥の主演で2021年10月ドラマ放送予定です。

中学受験専門の塾ではないですが、
中学受験~大学受験まで対応の塾で現役で働いている私が
『二月の勝者』の塾講師あるあるについて教えちゃいます。

<二月の勝者>
参考文献1巻2巻3巻


では、早速『二月の勝者』3巻についてみていってみましょう。
以下はネタバレ含みますので、まだ読んでないってかたは飛ばして下さいね。


第18話 3月の作戦

偏差値40の成績を偏差値50に上げる方法とは?

R クラスは4月の模試までに、模試の過去問を使って黒木先生の指示通りの指導を行うことになりました。
模試の過去問を解かせて対策をする、というものすごーく普通の模試対策。
(うちの塾はこれはしません。結果が正しくデータほしいので。)
早速1年前4月の帝都圏模試の過去問にチャレンジ。

結果は・・・

さんさんたるものでした。

点数とともに採点して偏差値も記入。

問題用紙も回収して黒木先生に見せます。

基本的な計算ミス、小数点の打ち間違い、検算すればわかるミスや時間配分。
約分ミス、転記ミス。
総合的に「ケアレスミスがなおらない」。
ただ、できる問題をまず選んで先にやるという作業自体はできている。

「オメガクラスは当然ケアレスミスが少ないのですが、Rクラスにケアレスミスが多いのはなぜだと思いますか? 」と問う黒木先生。

「注意力が足りないのと。
練習量が足りないのと ・・・。」

「そういうのひっくるめて馬鹿って言うんですよ」という黒木先生。
(わぁー、なんてセリフを言うんだ、黒木先生!)

「さくら先生、感情がすぐに顔に出ますね。
怒りたくなる気持ちも分かります。
塾講師が絶対言ってはいけない言葉をあえて使わせていただきました。
何故か、基礎の計算問題の重要さが未だにわからないようなできない子は、出来る子の真似自体が無意味。

じゃあどうするか?

帝都圏模試、算数の問題は大問8問。
大問1が計算問題。基礎中の基礎問題。
問題が進むにつれじょじょに難易度が高くなってきます。

大問4まででだいたい全体の半分のボリューム。
ちょうど真ん中の大問4、ここで模試の問題半分でおしまい。

後半の大問をやる資格なし」

びりっと模試の問題を半分でやぶく黒木先生。
さくら先生は不満が顔に出てます。

「算数の偏差値が30台の非常に残念な4名に限定で問題は半分量。
でも時間は同じ50分でもう一度解かせてみてください。
とにかく私の言う通りしてください。話はそれからです」

第19話 4月の成果

偏差値30台の4人は後半半分の問題はやらない。」という黒木先生。

「それって馬鹿にしてるんですか?
できる問題を選んでやることと何が違うんですか?」
感情をあらわにするさくら先生。

「その違いについて今はあえて教えません。
とにかくこの方法をやらせます。

ただでさえ2割強しか取れない点数をはなから半分、盛大にドブに捨てさせてやってください」

「私そんなこと・・・」

「何か他に案があるんですか?
私から直接この模試のやり方を教えます。
例の4人に次の授業前に招集かけておいてください」

「黒木先生、今みたいな言い方をあの子達にして、傷つけたりしないでもらえますか?」

2日後、Rクラス4人が黒木先生と話した後ですが、変わった様子はなし。

再び算数の模試の過去問を解きます。
一昨日やった時よりも落ち着いてる感じの生徒たち。

採点をすると4人中3人が10点以上アップ!
結果、偏差値が5ポイントも上がりました

「理由は説明できますか?」とさくら先生に問う黒木先生。

「はい。
これは後半の問題の方が難しいのに、配点がどれも1問5点。

ということは、基本の計算問題を確実に取った方が得点アップにつながる。

帝都圏模試はだいたい30問各5点で150点満点。
30問を50分でやるので、1問あたり1.6分で処理する必要がありますが、後半の難問を捨てることで1問あたりにかけられる時間が倍の3分になる。

だから、結局、点数が上がったのだと思います」

「それならできる問題を選んでやる方式だっていいわけですよね?

できない子の味方みたいな顔して、本当は分かってないのでは?さくら先生。

焦りですよ。

「30問もある」「ここからできる問題を仕分ける」
それだけで彼らには焦りのもとになる。

焦るからケアレスミスが起きる。

だから、最初から半分しかやらなくていいということにして、焦りを取り除いた。
結果、ミスが減った。

しかし、この方法は本番の入試ではもちろん使えません。
同じような配点の仕方じゃないかもですし、最初が一番簡単で最後が一番難しいとも限らない。

ではなぜ、あえてここでこんなやり方をさせたのか分かりますか?

基本問題をおろそかにしないことの重大さを体感できるからです。

何も難問までできなくても、自分の実力で解ける範囲の問題をしっかり解くだけで確実に点数が上がる。
自分の実力で点数と偏差値を上げることができた。

この体験はどんな喜びにもかえがたい。
点が取れたという事実。
どんなご褒美よりもこれにかなう喜びと原動力はない 。

ただ基本を確実に押さえて、ケアレスミスを防ぐことで取れる偏差値は頑張っても50まで。
そこから先は・・・

また今度にしときます。
それより石田オウラ君は逆に点数が下がりました。

なぜか?これは宿題です。
原因を探し、成績アップのために何をすればいいのか考えてください。」


5月。

4月の帝都圏模試は「微増」に終わった。
そこへ、さくら先生へ学校の宿題の質問に来る生徒。

「作文の質問なんだけど、将来の夢!
小1の時には花屋さんって書いたらママは喜んだ。
でも小4の1/2の成人式でも花屋さんって言ったら、それじゃ困るのよねっていうの。
どうして花屋さんだと困るのか教えてよ」

第20話 5月の夢

将来の夢は何ですか?
夢覚えてますか?
子供の頃の夢って何だった?

前回、さくら先生に質問に来た浅井さんを中心に将来の夢について話している生徒たち。

1時間前、黒木先生からさくら先生はリサーチを命じられたところ。

生徒のことどれだけ頭に入ってます?
性格や好きなこと、趣味や特技。
今まで打ち込んできた習い事やスポーツの有無。それから志望校

(講師として、たしかにこういう情報はつかんでは講師同士で共有してますね)

「 それなら4月の模試の時に設定した志望校が」

その志望校は現時点で熱望しているのか?
とりあえず書いたのか?
親御さんの意向か、本人の意思か?

そして、その学校の校風は?
生徒にあった雰囲気なのか、否か。

そこまで把握してるかを聞いてるんです」

「いやそこまでは・・・」

「来週は保護者向け個人面談ウィークです。
間に合うよう早急にリサーチしてください」と。

早急にと言われても、毎日授業で精一杯。
苦肉の策として、生徒と一緒に夕食を食べることに。

目的と手段の良し悪しは置いといて、黒木先生は生徒の一人一人をきっちり見ている印象がある。
私ももっと生徒一人一人の性格や行動を見ていかないと、気合いを入れるさくら先生。

将来の夢の作文について、再びさくら先生に質問する浅井さん。
「正解があるわけじゃないし、自分の夢を素直に書けば?」と答えるさくら先生。
「そう書いたら、微妙な顔をされるんだって。働くはピンとこない」という小学生女子たち。

目先のことなら、「原宿でスカウトされて読者モデルになりたい」とか「西洋西部女学院中の制服着たい 」と思わず学校の情報がでてきます。
「スカーフが絹でできてて、ミッション系なの。チャペルとかって素敵でしょう」
「憧れる~!」
「昌川女子のキャメルのブレザーいいよね 」

「何々志望校の話?俺の志望校さ、絶対米田実業!野球やるんだ」と男の子もまざってきました。
「男子に聞いてねえし」「ドラフト1位に影響を受けたけ系?」

「つーか、みんな志望校どこよ?
三浦サッカーやってから國學院?帝国?武田もサッカーやってたんだよな ?
上杉はどうよ?」

お母さんがそういうことは人に話すものじゃないって
(講師として、志望校はなるべく話さない方がいいような。
宣言したほうが本人が気合いが入るような。
ケースバイケースですが、ただ同じクラスにいると生徒同士もなんとなーくわかっちゃいます。)

「話したくない人には聞かなくていいじゃん」
「ちょっとだけなら、お父さん医者だから、医学部に強い学校ならいいかなって。
親からはそういうの考えなくて、好きな職業目指していいと言われてるけど」
「 なんかよくわかんないけど大変そうだなぁ 」

「医者なんて夢なら親が喜びそうだけどなあ。
作文なんて書けばいいんだろう 」

たまたま志望校の話になったのラッキーだったなあ、と授業が始まるので教室を去るさくら先生。
でも、さっき各自が口にしてた学校と実際に模試の判定で提出してる学校名が必ずしも一致しない。

何のために受験するのか?
本人の夢のため?

親の意向と本人の好みの相違?

だとしたら優先すべきは親の希望?子供の希望?

第21話 5月の回顧

社会科の木村先生は、
こち亀を読んで「交番のお巡りさんになりたい」と言ったら
「そう。そのためにも中学受験しなきゃね」って夢をダシに受験させられたそう。
「でも僕は受験して良かったと思ってます」結果オーライですね。

算数理科講師の立花先生は、小学生の時は夢なんて考えたことのない。
野球やってたから、プロ野球とか甲子園行きたいとか、そんなことなら言ってたけどね。
塾講のバイトやってたら、面白くなっちゃってさ。
そんなでも毎日やりがいある仕事出来て、結果オーライって感じ。

かつら先生の将来の夢は、社長。
中学受験して入った女子高もキャリア教育重視だったり、考え方は今でも特に変わってない。
この先も社長目指すとかもあり。

「さくらちゃんはどんな夢持ってた?」とかつら先生にたずれられた、そこへ黒木先生が
「 また夢などというくだらない話をしてるんですか?
夢を持つことは否定しません。

まさか小学生の夢なんかを志望校選びの理由付けにしてはいないですよね

子供は裏切ります。
言うことを真に受けてはいけません」
(将来の夢から志望校選び・・・は確かにオススメいたしません、ねぇ)

仕事のあと、ケーキを食べにきたかつら先生とさくら先生。

「子供を信用しないような人がどうして子どもを教える仕事してるんですかね。
それこそ黒木先生は夢を持って仕事してるんでしょうか?」

「 まあ、私は黒木先生の言いたい事も分からんでもないけど」

「どうしてですか?」

そこへ、隣の席の人が書類をばらまく。

「大丈夫ですか?」と助けるさくら先生。
書類は2月の入試問題でした。

隣の席の人は同業者で、フェニックスの講師。
「よく過去問解いてるのみかける。塾講師であのルックスって珍しいじゃない。
塾講師はイケメン少ないからね。
元々そこそこのルックスでも、夜型の生活で太るし。
かなりのやり手みたいなのは確か」
と、かつら先生。
(たしかに塾講師はルックスに気をつかってるかたとぷくぷくコースと二分化されてるかもしれない)

仕事の帰りにも過去問研究とかすごい!
見習わなきゃいけないかもと思うさくら先生。

「ところで、明日休み取ってるけど、どこか行くの?」
「しばらくおばあちゃんに会ってなかったので、久しぶりに行こうか、と。
あまり調子が良くないので、時間作って会いに行きたくて」
「そうなんだ。近くに住んでるの?」
「山梨です」

山梨にて。

駅までいとこの修治にいちゃんが迎えに来てくれてます。
「塾に勤めてるんだよね?」
「 学校の先生にはならないって、大見得切ったのに。
結局教える仕事だしさ」
「いいんじゃないの。血は争えないってことで」
「でも受験塾ってこっちじゃ何それって感じでしょ?」
「そうでもねえよ、ほら外。」

車の窓からは、塾の建物がたくさん見えます。
「あそこ、カラオケボックスじゃなかった?」
「ずいぶん前から塾さ。こっちも塾だらけじゃんね」

第22話 5月の嘘

「ばあちゃん、久しぶり」
「まい、よく来たね。今、お客さんが来てるさー」
「これ東京のお土産です」
「お孫さん、いくつ?」
「24です」
「私たち、先生に小学校で教わった生徒なの。
もう50年前になるかな」

いつ来ても誰かしら生徒さんが訪ねてきてるおばあちゃん。
もう教職を退いて、20年も経ってるのに、やっぱりすごいなおばあちゃん。

「お孫さんもいい先生になりそうね」と帰って行くおばあちゃんの教え子たち。

いとこの子ども、けんたと遊ぶさくら先生。

「けんた、体力ついたね」
「もう毎日やんちゃで困るよ。
毎日パワー持て余してたから、まいちゃんみたいに空手で発散させればいいのかなって始めさせたら、余計体力がついた」
「男児あるあるー」
「空手もだけど、教室にも通ってるんだよ。
まあ、塾みたいなもんかな。小学校受験させようと思って。
国立の小学校しか受けないから、ダメ元なんだけどね。おばあちゃんには内緒」

おばあちゃんのベッドの横へいくさくら先生。
「ばあちゃん入院してたこと、後で聞いてびっくりしたんだよ」
「心配かけてごめんね。
それより、まいは忙しいんでしょ。
学校の先生になったんだってね。よかったね。
子供の頃の夢が叶って」
「うん。そうだよ。先生になったよ。
おばあちゃんとお父さんと同じ先生になったよ」
「そうか、そうか。嬉しいね」
「うん。小学生教えてる。子供好きだしね」
「まいはきっといい先生になれる」

廊下で話をきいていた修治はさくら先生に謝ります。

「ごめんな」
「兄ちゃん、ごめんって何?」
「いや、ほら学校の先生って言っちゃって。
ばあちゃん古い人だから、塾の印象がさ」
「大丈夫。分かってるから気にしてないよ。おばあちゃんの気持ちも分かるから」

ほうとうを食べるさくら先生。
「まいちゃんが勤めてる塾って、中学受験専門なんでしょう?
あ、おばあちゃん部屋で寝てるから大丈夫。どうなの?やっぱり東京だと多いの?」
「うん。やっぱり多いよ」
「まいちゃん、こいつ。
あっちこっちからいろいろ聞きまくりすぎて、教育ママみたいになってんだよ」
「しゅうちゃん何も知らないから、のんきでいられるんだよ。
まいちゃん、実際に小学生がみんな勉強好きなわけないじゃない?
どうやってモチベ持たせるの?


「塾の子見てると、やっぱりいろんなことに興味持たせるのが大事な気がするな。
早いうちから塾漬けとかよりも、自然体験とかに行ったり。
家族で博物館行ったりとか

(塾講師として、これはめちゃくちゃ肯定します!!
早い時期から幼児教育どっぷりで、習い事漬けよりも。
公園で自由に遊んだり。
ゆっくり自然の中で遊んだり。
動物園、科学館、水族館などで興味関心を伸ばした子のほうが伸びていきます。)


「やっぱりそれか。ねー、明日あそこに行こうよ。県立科学館!!」

第23話 5月の出会い

県立科学館。
写真がとれる顔パネルに行こうとすると、以前書類をばらまいたフェニックスの講師に会います。
「フェニックス!」とさくら先生が叫ぶと。
「僕、会社のものつけてます?」とあせるフェニックス講師。

桜花ゼミナール吉祥寺校の名刺をさくら先生が渡すと、「黒木先生の!」と反応する男性。
「ご親戚とはぐれたんですか?では、一緒に回りましょうか?
出口に向かえばゴールできますし」と思いがけず、一緒に見て回ることになりました。
「こんな所で同じ地域の同業者と会うなんて、何かの縁ですから」
「私は祖母がこっちなので、いとことここに来たんですが。
灰谷さんはなぜここに?」(フェニックス講師は灰谷さんって名前なのですね)

「ぼく、宇宙マニアなんですよ。
休みの日に思いつきで、地方の宇宙関連の施設に行くのが趣味で。
宇宙飛行士が夢だったんです。
だから、理科はすごく得意で、理工系に進みました。
だから教える教科も 理・算です」

小惑星コーナーに夢中になる灰谷。
「イトカワといえば、はやぶさですよね。
イトカワへの着地失敗。エンジントラブル。通信の断絶。
度重なるトラブルで絶望的になっても、決して諦めないという信念でミッションを成功させた。
たまに授業を脱線してまで子供達に話してしまうんですよね。
お恥ずかしい。ちょっと熱くなってしまいました」

「 授業の脱線話って、そっちの方をよく覚えたりしますよね」
「黒木先生もよく脱線しませんか?」
「それはちょっと、授業見たことなくて」
「見た方がいいですよ。勉強になりますよ」
「そう思うんですけど、怖くて。
いつもこんな目をして無表情で、顔をがーっと近づけてめっちゃ変な圧かけてくるじゃないですか」
「あれはど近眼だからですよ。よく見ようと思って近づいてるだけですよ」
「意外。じゃあ、もしかして近眼のせいでサッカー辞めたとか?」
「サッカーって、そのことどこまできいてるんですか?」
「どこまでって、前にリフティングを見たことあるくらいで」

「リフティング。そんなことしたんですか。
桜花では随分と自分を出してるんですね。
だからって、黒木先生のことを知った気にならない方がいいですよ。
あの人に気を許してはいけません。
あの人は平気で子供を裏切る人間です。」

「子供を裏切る。
黒木先生に子供の夢の話を真に受けるなって言われたんですけど。
それってその裏切りと関係が?前に志望校選びの話で私が子供の夢を考慮した選び方を言ったら否定されて」

「子供の夢を中学受験で指針にするなんて論外ですよ

子供の話ってコロコロ変わる。夢など関係ありません。
常に偏差値の高い学校を目指すべきです」

「なぜですか?
夢によってはそこまでのトップ校を目指す必要なかったりしませんか 」

「いいえ。大は小を兼ねるのごとく、高ランクの大学に進学することは職業選択の幅が広がるということ。
成長につれ、夢の形も変わることを見込めば当然 。
トップランク大学を目指す仲間のいるトップ中学を目指すべきです」

「でも、さっき灰谷さん、宇宙飛行士になりたかったからこそ進路が決められたって。
夢は子供の進路の指針になりますよね?」
「 さくらさん、僕、今宇宙飛行士ですか?違いますよね。
夢なんて、叶えられるのはほんの一握り。
せめていろんな職業を選べる高い学歴を子供達に与えてあげるべきなんです。
さっきの黒木先生の話に戻りますが、彼のことで何か困ったことがあったらご連絡下さい。
いつでも相談に乗りますよ」

「フェニックス灰谷純」という名刺をもらいます。

第24話 5月の回答

東京お茶の水桜花ゼミナール本部。
「桜花に来てみて。なんか自分の中でこう変わったこととかある?」
と黒木先生にきく桜花ゼミナール社長白柳徳道(60)

百ます計算が30秒切れなく、調子悪いなあと話す社長。

「喋りながら計算してるじゃないからじゃないですか。
桜花は学ぶべきことがたくさんあり、とても良い環境です」と返す黒木。

「そうか、じゃあ、例のあの子のことにも活かせそうか」

桜花ゼミナール吉祥寺校。

「トップ中学を目指すべきねえ。
フェニックスの講師ならそう言うかもね。
そして、その考え方もある意味正しいけど、うちはうちのやり方があるから、気にしなさんな」

「うちのやり方についてなんですけど、逆にこれだけ時間もお金もかけてトップ校じゃなくてもいい理由って何ですかね」

「んー。まず、親御さんたちはなぜお子さんに中学受験させると思う?各家庭でもちろん違うけど」

「えーっと、いい大学に進んで欲しいとか」

「そう答える人がとても多いのは確か。
だから、志望校を選ぶときに基準が偏差値になりがち。
そこでこう質問するの、お子さんにはどんな大人になってほしいですか?
いい学校に入って、いい会社に就職してほしい。それだけですか?
思いやりのある子に育てたい?競争に勝てるタフな子に育てたい?
リーダータイプ?フォロワータイプ?勉強だけ?部活も?他の体験は?


受験しなくても地元中学に行けるのに、わざわざ受験のため3年間も塾通いして、入学したら高い学費を払い続ける。
勉強だけなら地元中⇒公立高校に塾や家庭教師プラスの方がコスパは良い。

なぜ私立なのか?
私立中高の学費6年間で500万円前後のお金をかけて、手に入れたいのは学歴だけですか?

さてヒントはここまで。あとは自分で考えよう。でもアイテム置いとくね」

と、中学受験ガイドをさくら先生に渡します。

「この本なら私立校を知るために、よく見てますけど」

「今の話を意識して再度眺めてみてほしい。
とりあえずうちの校舎の近くの学校や、生徒が志望校としてあげてる学校をチェックしてみて。
偏差値以外のところね」

偏差値以外・・・どういうことだろうと、さくら先生はガイドを見ながら何かに気がついたようです。

「浅井さん、この間の作文の質問、私なりに考えてみたんだけど。
夢の作文、今の正直な気持ちをそのまま書けばいいんじゃないかな?
なんて書けばいいのか分からないって気持ち」

「そんないい加減なこと書いたら、大人が何て言うか」

「じゃあさ、たとえばこんな学校があるんだけど。
ミッション系の女子大付属なんだけど、外部進学も目指せる進学校なの。
さらにに他の学校にはないと独特の園芸という授業があります。
好きなお花の実習をしながら、将来の夢じっくり決めれるよ。

作文はこういう学校に通いながら、ゆっくり将来を考えようという流れで書けば・・・」

「あのさ、さくらちゃん。私、別に本気で花屋目指してるわけじゃないけど?
適当な夢とりあえず書いとけってノリで言ってただけで、別に園芸が好きなわけじゃなし」

わああ、早とちり本と落ち込むさくら先生ですが、
誰にでも偏差値の高い学校をすすめるより、子ども本人に合いそうだっておもえる学校をすすめていけたらと、一つの道がみえてきたようです。

第25話 6月の成長

6月中旬。
保護者面談期間スタート。

保護者から頂いた志望校アンケートとこちらからのおすすめの学校のリストを生徒別にまとめたさくら先生。

「いいんじゃない?
英語教育を重視してる学校を希望してる山本香苗さんのご家庭には、帰国生を多くとってたり、交換留学制度やイングリッシュキャンプが充実してる学校をおしてるし。共学というご希望も考慮してる。」

「 それならこないだ俺、文政学園見学してきたんだけど、日本にいながらカナダの高校の卒業認定もとれるコースがあって、難関大に帰国子女枠で多数合格者出してるんだよ。
中学から入れば偏差値40台だからお得かも。
2校分の卒業資格だから、学費もほぼ2校分だけどね」

「有名女子校手当たり次第っぽい、今川さんとこ。
本人は元気系で自己主張のはっきりしたタイプなのに、校則厳しめのカトリック校あげてるけど。
さくらちゃんは同じミッション系ブランド女子校でも、他にプロテスタント系の女子校をリストアップ」

「自由とか活発みたいなキーワードで選んでみました」

「いいと思う。
入ってから、自分と合わないと思いながら過ごす6年なんて絶対避けてあげたいもの」

「第一志望のレベルが高すぎるのが気になりますが、第二志望以下で気に入ったところが見つかれば、と」

「さくらちゃん、今日これから伊藤章太郎君のご両親との面談だけど、面接のリード任せるのでやってみて」

Rクラス 伊藤章太郎父・母

東英大付属白金と日照大付属杉並をすすめるさくら先生。
「この2校に共通している点があります。
それはどちらも系属する大学に、医学部・薬学部の推薦枠があります」

「それなら医療系進学の可能性は残せるな」

「両大学ともマンモス大学。他の学部も幅広くカバーしています。
あくまで安全校としてのご提案です。
第一志望は変えずに、お守りとしての併願校の候補として大変魅力ある2校と思いますが」

「全然ノーマークだった。
第一志望と違って偏差値的には届いてるし」

「もう一点、おすすめポイントが。
こちらの学校ですと、系列大学に海洋学部もあります。
章太郎君、水族館とか好きですよね?
もちろん親御さんの医療系に進んでほしいというお気持ちも大事ですが、まずは本人の受験に対するモチベーションづくりにこの話もしてみては」

「そうですね。とにかく一度見に行ってます。
でも、先生、もし見に行って私たちは微妙と思っても、本人だけが気に入ってその気になったりしたら」

「ええっと・・・」

1度目の訪問はお子さん抜きでなさってください。
お子さんに見せるのは親御さんが気に入った学校のみで。
だって、学費を払うのは親御さんですからね」と助け船をだすかつら先生。

「さくらちゃん、よかったよ。
よく調べたね、特に海洋学部」

「たまたまですけど、伊藤君よく水族館グッズ持ってたから」

そこへ黒木先生が
「身の丈レベルの併願校を勧めるのも良いですが、今よりも偏差値10以上高い第一志望校設定の件は忘れないで下さい」と釘を刺します。

6月下旬。
クラス分けの結果、生徒の入れ替えがあります。

サッカー少年三浦祐星くんは6月偏差値が47から52に。
鉄道大好き加藤匠くんは6月偏差値45から50に。
2人はAクラスに上がります。

大内礼央ちゃんは偏差値50から48に。
福島圭くんは偏差値51から48に。

2人はRクラス落ち。

「慣れてるとはいえ、クラス落ちした子を見るのはなかなか辛いよな。
今回AからR落ちした福島くんなんて、たった一点の差だよ」と、たちばな先生。

「そうなんですか?ここまで細かくクラス分けする必要ってあるんですか?」というさくら先生。

そこへ黒木先生。
「大ありですよ、さくら先生。
一点刻みのシビアなクラス替えに変えてから、何かが変わったことに気づきませんか?橘先生。
分かりませんか?電話。保護者からのクレーム電話が減ったの気づきませんでした?
例年クラス替えの直後はクレームの電話ラッシュで仕事にならなかったと聞きましたが、親御さんは表向き努力や頑張りを評価して欲しいと言うくせに、いざ明確な数字を出すと黙ります。
よって、目に見えないもので評価することは今後一切やめていただきたい。

クラス落ちの生徒の心配をしてる場合ではないでしょう。
いよいよ夏期講習、受験の天王山。

過酷な登山について来られないものは、生徒も講師も置いていきますよ」

第26話 7月の衝突

桜花ゼミナール社長白柳が電話にでます。
「黒木君、どうした?」

「 吉祥寺校の件で相談です。
私個人の判断で講師の人事を執り行いたいのですが」

「もちろんOKだよ。前にも言った通り、吉祥寺校は桜花の治外法権だから」

いよいよ7月。
夏休み開始と同時に夏期講習が始まります。

「本校では6年生全員の申し込みを頂きました。皆様のご尽力の賜物です。
しかし、1学期を通して伸びたと思える生徒はそれほど多く感じません。
特にAクラス。たちばな先生、私は算数の偏差値全員アップをお願いしたはずですが?」

「ボリュームゾーンの生徒を伸ばすのが、一番難しいと思いますけどね」

「一番調子の良い生徒でも偏差値55で頭打ちのまま。このままでは中堅校どまり。
この状態どう打開します?」

「そんな簡単に言わないでくださいよ。45の子を50にあげるのと一緒にされちゃ困るんだけど?」

「確かに55の生徒を60に上げるのは本当に難しい。
偏差値は一定の斜度の坂道なのだと思ってる保護者も多いですが、偏差値55までは確かに少しずつの高低差で続く坂道です。

しかし、実は55から60の間は言うなれば、断絶した崖道。

この時期は中堅から上位層の偏差値は下がるのが当たり前。
今まで模試の範囲が習いたての単元の順になっていたものがより総合的な内容になってくるからです。

今まで算数を公式丸ごと覚えて点を取っていたタイプの生徒は、ここで一気に失速します。

この危機的状況どう切り抜けるおつもりですか?たちばな先生」

たちばな先生
「僕もね、伊達に長年、中堅塾でやってきたわけじゃないんですよ。
もう手は打ってあります。
算数が伸び悩んでる生徒には、5年生の時に使う塾のテキストに戻った宿題を出してます。
桜花で使用する大手塾渋谷大崎の5年生のテキストは、大事な単元の基礎をほとんど網羅してます。
一通りおさらいすることで理解の甘い単元や苦手な分野があぶり出せます」

「悪くはないですが、しかし、別の大問題が発生しますよね?
保護者のクレーム。うちの子は5年生レベルって言いたいのですかって。

手っ取り早く黙らせましょう。
5年のテキストから出題のテストを行って、Aクラス上位3名をオメガに特別加入させるというエサをまきます」

「それは僕は反対だ。
オメガは難関以上を目指すクラスなんだから、中堅から上位校までを狙った生徒には完全にオーバースペック。
ただでさえ無理をしているのに、これ以上負荷をかけてどうするんですか 」

「生徒に負荷をかける心配よりも、保護者を騙せる黙らせることの方が先です。
口うるさい親ほどオメガを餌にすればすぐにだまります。

根気のいる説得をしている時間があったら、生徒の質問に対応したほうがマシでしょ」

「確かに正論だわ。でもね、黒木先生・・・」

「たちばな先生、私はパワハラなどしたくないんですよ」

来年できる桜花の名古屋校、中堅の講師を選んで転勤させる予定らしい。

「パワハラしたくないっつったって、すでにパワハラだよなぁ」となげくたちばな先生。

たちばな先生は居酒屋で家庭教師の知り合いに会います。
「例の件、お前のとこの新校長さん。元フェニックスのやつから面白い話が聞けたぜ」

翌日。
A クラスにオメガ選抜テストのお知らせが配られます。
5年の時のテキストから出題。
「A クラスから上位3名だったら僕も」と燃える子から「リベンジ」「関係ないかな」となってる生徒様々です。

Rクラス落ちした後に、そんなチャンスがあるなんてと大内礼央ちゃんもショックを受けています。

うちの子が落ちて、Rの子がAに上がったんなら、それは先生の指導力のせいなんじゃないの。
礼央の成績が下がったのは橘先生のせいじゃない!?と礼央の母は不満をためている模様。

第27話 7月の問答

夏期講習が始まりました。
世の中の小学生がそれぞれの夏休みを楽しんでいる間、
受験をする子達は昼の1時半から夜の8時半まで1日7時間という長丁場を塾の中で夏休みを過ごす。
当然、私も二度とない夏のつもりで夏期講習に気合いをいれるさくら先生。

ゲリラ豪雨の中、びしょ濡れの黒木先生がやって来ます。

「6年の生徒はもう全員来てますね。
それでは、今日は特別に気を引き締める意味でも全クラス私から一言挨拶します」

Ωクラス(偏差値57以上 最上位クラス)
天王山。オメガクラスなら当然知ってますね。
京都府にある山で、羽柴秀吉が明智光秀を討った山崎の戦いの舞台です。
それにちなんで、勝敗の分かれ目になる大事な機会という意味に使われるようになりました」

「先生どうして濡れてるんですか?」

「 話が飛びますね、直江さん。いいでしょう。
夏の風物詩ゲリラ豪雨の仕業です。
そういえば、今年は大変な水害がありましたね。
オメガの君たち、ちゃんとニュースをチェックしてますか?」

「新聞読んでるー!」

「この夏、君達は塾にカンヅメの生活を送りますが、家では新聞・テレビのニュースをちゃんとチェックして下さい」

「テレビ見てもいいんですか?」

「ニュースは必ず見てください。
それだけでなく、ニュースを扱った番組、池上彰の番組などは最高です。
進んで視聴を。
なんなら黒木が観ろと言ってたと話して構いません。

入学試験のテスト問題は実は7月から8月に作られることが多い

例えば、今回の大水害。
今年は数多くの学校が意識した出題をするはずです。
そこから予想されるキーワードは無数に想起されます。
雨温図。梅雨前線。年間の降雨の地域差 。
社会や理科だけでなく国語の出題にも影響しそうですね。
しかも、水害の逆をついて、日照り。雨乞い。
そんな単語ので物語文が出るかもしれない。
そういった語句は聞いたことありますか?意味を知ってますか?

その他にも今年でそうなキーワード。
世界遺産は長崎。米朝首脳会談、場所はシンガポール
成人年齢の引き下げは2022年。
ハワイ・キラウエア火山。霧島連山は宮崎・鹿児島。
日本国憲法。天皇陛下退位
など。
(2022年入試でも、水害は出そうですね)

テキストの中だけが勉強ではない。
外の世界とも繋がりましょう」

偏差値48以下Rクラス。
「ニュースと池上彰だけなんて無理~。バラエティみないと死ぬ~」

「日曜日放送のジャニーズのグループが出る村や島などで頑張ってるあの番組ならありです。

夏休みとはいえ、君たちには時間がありません。
そこでRクラスの面々に言っておきたいことがあります。

夏期講習は学力を上げる最後のチャンス。

夏を逃したら、もう二度と挽回できる機会はありません。
範囲全部の単元をさらえるのが最後だからで。
復習をして、基礎の穴を見つけ埋めていく作業は秋以降にはもうやる時間がありません。
いいですか?これが本当に最後です。
脅しでもハッタリでもありません。
その最後がかかってるこの夏、真の意味で受験生にならなければならない」

偏差値49~56 中堅Aクラス
「どうやって学力を積み上げていくのか、という大事な話をします。
Aクラスの君達は、夏期講習のテキストこの星がついてる基礎問題だけやってください。

本当の意味でしっかりとこなせば、誰でも偏差値58までは上がります。

何か質問は?」

上杉君
「あの、それやったらオメガに入れますか?
オメガって応用までやってるわけだし、星だけやってて入った後とか大丈夫ですか?」

「その心配には及びません。
とにかく基礎を固めなければ、応用に手を出しても無意味です。
詳しくは、後で個人的に説明しましょう。

他に原さん、何かないですか?」

原君「はい」

「加藤さん、君はどうですか?」

加藤君「まず乗車券を買ってから、特急券とか指定とかを買うみたいな話し?」

「伊達さんは理解できましたか?」

伊達君「俺、マジか!ビビる。はい、もちろんです。
めっちゃわかってます」

「柴田さんはどうですか?」

柴田さん「すみません。質問なんでしたっけ?」

「質問はこれくらいにしましょうか。
大体理解してくれたと解釈しましょう。

では、皆さん小学生最後の夏休み悔いのなきよう

小学生最後の夏休み。
改めて責任の重大さに身震いするさくら先生。

「何か、気づきませんでしたか?

正直、どの生徒もしっかりと基礎を積み上げれば偏差値58までは引き上げられると話しました。

しかし、もっとすごい・・・最終的に偏差値58の壁を破る下剋上。
サッカーに例えるとジャイアントキリングをなしえそうな生徒が一人います。

ヒントはこれまで見てきた中に全てありますよ」

誰なんでしょう??
気になるところで3巻は終わりです。

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